NeやFiなどの8つの要素は、決して画一的なものではありません。むしろその使い方によってさまざまな顔を見せるようなものです。今回は、内向感覚Siのバリエーションについて解説していきます。
Si(内向感覚)とは?

Siとは要素のうちの1つで、内向感覚(Introverted Sensing)の略記です。ソシオニクスにおいてSiとは、「経験的な感覚」とも呼ばれ、特に体調や気分に関係します。Siは目の前の状況から、身体と身体や、身体とモノ、あるいはモノとモノとの間で、どんな感覚・作用が生じるのかという関係を捉えます。たとえば、身体のどこにどんな力を加えると気持ち良さ(痛さ)を感じるのか、何を摂取すると気分が良く(悪く)なるのか、何を見ると美しい(汚い)と感じるのかなどです。
内向感覚(Si)のバリエーション
内向感覚(Si)のバリエーションとは、言い換えれば、モデルAのどの機能がSiを持つのかです。それを表にすると、以下のようになります。
自我のSi――Siへの信頼
主導する機能、創造する機能(自我)のいずれかにSiを持つタイプは、Siを信頼します。
①主導するSi:SEIとSLI

①主導する機能にSiをもつSEIとSLIは、Siを武器にします。つまり、自分や人の体調を理解したり気遣ったりすることは、この2タイプにとって最大の長所であり、アイデンティティにもなっています。
以下は模範的ともいうべきSiの使われ方です。
自分や他者の身体の状態を見分けたり、どうするとこのような状態に至るのかを理解したり、これらの身体の状態を再現したり回避したりする能力にたけています。
内向感覚を主導する機能に持つ人は、自分の身体的な経験を満足させる状況に惹かれます。身体の状態の認識、再現、分析に関わることに参加しているときはいつも、パワーに満ち情熱に溢れています。
不快からの回避は、このタイプの持つ主要な動機付けの1つです。ピリピリした空気、過労による体力消耗、他の人やたくさんの「やるべきこと」から感じるプレッシャー、そして満たされなかったり満たされすぎたりする身体的な欲求から、内的な不快感が生じます。このタイプの人たちは、不快感が生じるとすぐさま気がつき、そしてそのことについて非常にうるさく主張します。そして、賢い方法によって不快感を消し去るか、あるいは単純に悩みの種となるものから逃亡します。自分と不快感を共有する他者には、大いに理解を示します。そして、そのような他者のストレスを軽減する手助けをしたり、良い解決策を提案したりします。
内向感覚を主導する機能に持つこのタイプは、自分がいる環境(自分の周りにいる人々を含めて)に絶えず自分を適応させており、当該の状況における要求に対して何が「適切」なのか、固定的な意見をもつことは滅多にありません。したがって、彼らは他者の要求には喜んで即興でこたえようとします。根拠なんて「しっくりくるから」で十分なのです。このようなふるまいは、内向直観が弱いということも相俟って、見ている側からすると行き当たりばったりにうつるかもしれません。
Introverted sensing – Wikisocion
SEIとSLIは、どんな状況にでも使える一般的な対処法は持ちませんが、その都度状況を認識・分析することによってどんな状況にも適応します。
②創造するSi:ESEとLSE

①のSLIとSEIと似て、自分や人の体調によく気づくのが、②創造する機能にSiをもつESEとLSEです。
創造する機能に内向感覚を持つこのタイプは、人々を穏やかな気分にさせたり楽しませたりする計画を立てるのが元々得意です。しかし、自然とそういうことをしているというよりは、個々の場面で必要性が生じたときにそういうふるまいや技術を発揮するというのが常です。主導する機能に内向感覚を持つSEIとSLIとは違って、いつも穏やかで安定していることを重要視してはいません。
Introverted sensing – Wikisocion
下線部が①の2タイプとは異なる点です。①の2タイプがいつも自他の体調を気遣うのに対し、ESEとLSEは「必要性が生じたとき」に限定されます。また、どちらかというと彼らは、自分自身の体調というよりも他人の体調に関心があります。
この人たちは人の趣味や好みに調子を合わせ、何かしてあげたりプレゼントをあげたりすることで友達や家族を喜ばせるのが好きです。たとえば、整理整頓や掃除をして家の中を快適にするとか、楽しいところへ連れて行くとか、あるいは趣味を追求できるような機会や人を見つけてあげるということをします。
同上
また、①に比べるとサポートは比較的間接的です。環境を整えたり、楽しいところへ連れて行ったりすることで、自分で自分を安定させられるような機会を与えます。
超自我のSi――Siへの不信
規範の機能、脆弱な機能(超自我)のいずれかにSiを持つタイプは、Siに対して不信感を覚えます。
③規範のSi:IEIとILI

①や②とはガラッと変わり、Siへの不信を表すのが③規範の機能にSiをもつIEIとILIです。
くつろぎだの楽しみだのそれをもたらしてくれる娯楽活動だのの必要性を他人に強調されるのを嫌がります。なぜなら、内心はまったく逆のことを求めているからです。つまり、彼らが求めているものとは、行動力と決断力なのです。「自分の身体が何を言っているかに耳を傾け」るための時間を費やすよりもむしろ、外部からはっきりと要求されることで、不安と躊躇という自分の感覚に打ち勝つ必要があります。
Introverted sensing – Wikisocion
IEIとILIは、自分の体調に気づいたり整えたりすることへの苦手意識があります。楽しみは、あくまで自分の不調を取り除いて行動・決断できるようにするための手段にすぎず、彼らが本当にやりたいことからは外れています。そのため、娯楽活動に時間を費やしたがりません。
④脆弱なSi:EIEとLIE

③の不信感をさらに強めたのが④脆弱な機能にSiをもつEIEとLIEです。
脆弱な機能にSiを持つこのタイプは、Siの効果を気にしないし、Si的な視点は自分の目的達成には全然重要ではないというふうに考える傾向があります。遠くのことや長期的な思考と比べると、身体のこと、身近なこと、今ここのことの優先度は低くなります。典型的な特徴として、細部に宿る美への無関心さが挙げられます。というのは、長期的な視点で見たときに、細部を気にしていたらきりがないという意見に焦点があてられるからなのです。また、身の周りのことや自分の身体的な感覚にも疎く、自分が扱う必要のない物がどこにあるのかがよくわからないということがあります。
細部の美への無関心さは、LIEのほうが特に顕著です。EIEの場合だと、書類を書いたりサインをしたり、確定申告をしたりという低レベルな事務作業への嫌悪として脆弱なSiが現れます。
Introverted sensing – Wikisocion
③の2タイプと同様、体調を整えたり身体的な満足感を得たりすることは自分の目的とは違うものだと考えていますが、③以上にそうした作業に嫌悪感を覚えます。EIEとLIEにとって、体調は些末なことです。また、下線部「細部を気にしていたらきりがない」とあるように、全般的に目先の細かいことを嫌います。
脆弱なSiを持つこのタイプは、そもそもSi的な見方をどうでもいいと思っているので、この機能に関わる思いもよらない問題、新たな問題、あるいは見過ごされた問題のせいで、道を外れてしまうことが多いです。
同上
彼らは、このようにSi的なものを「どうでもいい」と考える性質に足をとられがちです。もしかしたら、日々の不摂生のために大病を患ったり、些細な問題がいつの間にか大問題に発展していたりすることがあるかもしれません。
超イドのSi――Siへの憧れ
暗示される機能、動員する機能(超イド)のいずれかにSiを持つタイプは、Siに対する憧れがあります。
⑤暗示されるSi:ILEとIEE

③④とは逆に、Siへの憧れを有するのが、Siを⑤暗示される機能に持つILEとIEEです。
生理学的な感覚、本当の欲求とバランスがとれている・結びついている感覚を含めて、自分の身体的な経過については慢性的に無自覚になりがちです。時々、独特な好み・嗜好を持っていることがありますが、それを自分では理解できなかったり満たせなかったりします。
Introverted sensing – Wikisocion
④同様、ILEとIEEも自分の体調にとても疎いです。何をすると自分の欲求を満足させられるのかがわからないことがあり、さらに好みも時に独特であるため、身体的な楽しみを覚えることが難しいです。
自分の魅力やセクシュアリティを大っぴらに強調することはまずありえません。しかし、少なくとも、信頼できる雰囲気の下で、自分の魅力やセクシュアリティを伸ばし高めてくれる信頼できる友達やパートナーとの小さな輪の中で、そういう感覚を満足させることを夢見ています。
同上
性的な欲求についても同じことが言えます。下線部が先の③や④とは異なる点で、特に④のEIEとLIEにとっては、体調を整えたり欲求を満たしたりすることはまったくどうでもいいことでした。しかし、ILEとIEEは、こうした身体的な満足感を夢見てもいます。
⑥動員するSi:LIIとEII

⑤と似て、Siに憧れがあるのがLIIとEIIです。
この人たちは、他人に楽しい感覚的な体験をさせてあげたり自分がそうしたりすることは苦手ですが、楽しいことについて話すのは好きで、それを聞いた誰かがヒントをくれたり誘ってくれたりしたらいいなと思っています。
Introverted sensing – Wikisocion
彼らも自分の欲求を満たすことは苦手であるため、身体的な快を得るにも他人の助けを必要とします。ただし、⑤のILEとIEEと違うのは、彼らが求めているのは、あくまでヒントやお誘いといったいわばアシストであるという点です。
定期的に緊張したり不安になったりしやすいのですが、基本的にはそういう嫌な感覚を自力で解消することができません。誰かにリラックスさせてもらうか、自分がしていることは本当に自分が必要としていることなのか、本当にそれを楽しいと思えているのか、そしてこの緊張の原因は何だったのかについて、誰かに内なる目で見てもらうかしなければいけません。
彼らはこの領域では極端に走りがちで、不健康なまでに感覚を失わせるか、逆に不健康なほど感覚を甘やかします。
同上
自分の体調の悪さ、気分の悪さを自分で解消することができないので、ここでも他人の助けが必要になります。その助けとは、自分の感じていることが何なのか見てもらうということです。こうした助けを得られないと、極端に走る傾向にあります。
イドのSi――Siへの侮り
無視された機能、証明する機能(イド)のいずれかにSiを持つタイプは、Siの価値を感じられません。
⑦無視されたSi:SLEとSEE

自分や他人の体調を整えたり、欲求を満たしたりすることは容易にできるけれども、あまり重要なことではないと感じるのが、⑦無視された機能にSiをもつSLEとSEEです。
自分の身体の状態と自分の感覚の質については申し分なく評価できますが、体験したり世界と関わったりといった外へと向かう活動のほうが優先です。外の世界でやるべきことがあるというのに、頑なに心の平和や安定に注目する人たちを見るともどかしくなります。このタイプ曰く、自分の感覚を探究することは、自分のプライベートな時間でやるべきことであり、公共の場では、最初からすべてを量り分けるのではなく、その場の状況に接したり溶け込んだり、あるいは舵をとったりする覚悟をしておくべきなのです。
Introverted sensing – Wikisocion
心の平和や安定を維持するのは得意ですが、もっと優先することがあると考えています。そのため、むしろそうしたプライベートな作業を頑なにやりたがり、パブリックな場面で必要なことをやらない人間には苛立ちを覚えます。
⑧証明するSi:LSIとESI

⑦以上にSiを得意としながら、⑦以上にSiを軽んじているのが、LSIとESIです。
自分や他人の体調や幸福、美的感覚、そして、良い食べ物やくつろげる状況といった感覚刺激のもたらす内的な影響、に気づいたり評価したりする能力には自信があります。促されれば説得力のある評価を与えることはできますが、息抜き・リラックスや、それについて話すことは、人生の優先事項というよりはむしろ楽しみの源だと見なしています。この領域においては全面的な自信があるにも関わらず、そんなに深刻なものとしてリラックスを扱わないし、そこまで頻繁にリラックスを自分に許しているわけではありません。体調や幸福に注意を向けることをあえて選ぶときは、外向感覚的なアプローチを好むことがほとんどで、自分にも他人にも、厳しく骨の折れるような食事制限や運動を課します。
Introverted sensing – Wikisocion
自分や他人の体調を整えたり欲求を満たしたりすることには全面的に自信がありますが、そうしたことを「人生の優先事項」であるとは考えません。心の安定のためにと言って、自分を甘やかすことはしません。