ソシオニクスの各タイプは、モデルAという構造をもちます。モデルAは、4ブロックからできていますが、今回は、もっとも得意でもっとも自分らしいブロックである、自我ブロックEgo blockについて説明します。
モデルAの「自我」ブロックとは?
自我ブロックとは、上のモデルAの図で赤く囲まれている1番上の行のことです。この自我ブロックは、意識/無意識の区分でいえば意識にあたるもので、第1機能の主導する機能と、第2機能の創造する機能の2つの機能からなり、「タイプの型」を形づくります。
自我ブロックがとらえる情報
それぞれのブロックは、それぞれ違う情報を集めています。なかでも自我ブロックがとらえる情報は、その人がいちばんはっきりと認識している現実です。
こんな比喩を考えてみましょう。リンゴが置かれていて、それを2人の人が見ているとします。
このリンゴを見て、左の人は「あ、リンゴ」と思いました。しかし、右の人は同じリンゴを見ているのに、やたらと饒舌です。
なぜそんな違いが生じるのでしょうか。それは単に、右の人はそのリンゴのことをよくわかっていて、左の人にはわかっていないからです。右の人は、例えば、そのリンゴが高級であること、甘味の強い個体であること、今が食べ頃であること、かぶりつくのが一番美味しいこと…等々をよくわかっています。しかし左の人は漠然と「リンゴ」ととらえて終わりです。つまり、左の人にははっきりと見えていない現実を、右の人ははっきりととらえたのです。
自我ブロックを使って情報を集めるときは、右の人に似た感じになります。
自我ブロックの機能は、(直接体験したり観察したり勉強したり内省したりすることで)新しい情報と刺激が絶え間なく流れ込んでくることを求めます。そしてその情報はすぐに分類します。何が有用・必要で、何がそうでないのかわかっているのです。自我ブロックに合致する類の情報に出会うと、人はすぐさま注目し、すぐにその事柄について自分の態度や意見を固めます。
Functions – Wikisocion
自我ブロックはつねに情報を求め、それを自分のなかで分類します。自我ブロックは、大事な情報とそうでない情報をすぐに見分け、次の行動を決めたり、自分の意見を固めたりします。言語化するのもいちばん簡単です。そのため、よく語りたがります。自我ブロックがとらえたことについて語るのはとても楽しいので、ついつい声も大きくなってしまうかもしれません。
右の人が自我ブロックを使っている人なら、左の人は自我ブロックを使っていない人です。「リンゴ」があることはわかるけど、それ以上はわからないか、あるいは興味がない人です。大してリンゴのことを気に留めず、もらったことを忘れて腐らせるかもしれません。
なお、自我ブロックは問題を放っておくことができません。
こうした(自我ブロックの)領域においてなにか正しくないことが起こると、思い切ってそのことを伝えて問題解決のために何かするまでは居ても立っても居られません。問題が生じるとそれを真っ先に指摘したがる人たちとは、その現実のアスペクトを自我ブロックで捉えている人たちなのです。
(同上)
高級リンゴを腐らせるなんて…その価値を知っている人からすれば、とてももったいないことです。左の人が腐らせてしまう前に、右の人は真っ先に食べるように言うなり、「俺が食べるよ」と言って自分で食べてしまうなりするでしょう。
自我ブロックの特徴
他にも自我ブロックにはさまざまな特徴があります。下でいくつか整理してみました。
自我ブロックには自信がある!
いちばんはっきり認識できるし、言語化するのも簡単で、話していても楽しい。だからみんな自分の自我ブロックには自信を持っています。
このブロックの活動はいつも未完結で自由な特徴を帯びます。このブロックについて、人はこう言います。「自分が必要なことが何かは、自分が一番わかっています。もし変化や改善が必要なら、助けをかりなくても実行します。」
Model A – Wikisocion
自信がありますので、型にはまることはしません。そして人にあれこれ言われるまでもなく、必要なことは自分でやってしまいます。
こうした領域では、他の人たちよりも自信をもって判断を下します。たとえ相手が広く認められた権威であったとしても関係ありません。人は、本能的にこの機能を濫用したがる傾向があり、わずかしか関連がないときですら、事実上どんな領域にもそれを適用しようとします。このために、他の機能に比べて、自我ブロックの機能(とりわけ①主導する機能)は、よそ目にも明らかです。
Functions – Wikisocion
さらに、自我ブロックに関することなら、相手が専門家だろうが大先輩だろうが関係ありません。むしろ「こいつは専門家のくせに何もわかっちゃいないな」くらいに思っています。そしてなんでもかんでも自我ブロックでとらえようとするので、はたから見ても自我ブロックはよく目立ちます。
自我ブロックは、人と関わる際の、自分にとって好ましくてもっとも快適で自然な役割や「動きのモードmode of operation」を描きます。人が自我ブロックの機能を使ってやりとりができるようになると、生き生きとして自信に満ち、権威があって熟達している雰囲気をにじませます。
Functions – Wikisocion
こんなふうに自信を持てる自我ブロックですから、会話中などで使えるととても楽です。人にも、生き生きとして自信のある印象を与えます。自分こそが専門家だ!と言わんばかりです。
自我ブロックは人助けに使われる!
逆に、自我ブロックを使わせてもらえないような環境にいたら悲惨です。自分は楽しくないし、周りからは暗くて自信なくてショボい奴だと思われかねないということです。満たされない思いや必要とされていない思いがあるときは、ただ自我ブロックが発揮できていなくて、能力に見合った社会的承認を得られていないだけです。自分の自我ブロックが発揮できるところはどこかに必ずあるということを忘れてはいけません。
自我ブロックが発揮できるところって、具体的にどこよ?というと、それは自我ブロックを人助けや社会貢献のために使えるところのことです。
(…)このブロックの機能の活動は、社会に向けられます。人はたやすく自我ブロックを使って経験を語ったり他者に援助を与えたりできます。自我ブロックの機能はめったに疲れません。したがって、人は自由な時間のほとんどをこの自我ブロックの機能に関連した活動に費やしても平気なのです。人は、自我ブロックの機能に基づいて、活動のメイン領域や職業を選ぶことが多いです。
同上
自我ブロックはいくら使っても全然疲れませんし、言語化するのも得意ですので、人を助けることも朝飯前です。たとえば冒頭で挙げたリンゴの比喩では、高級リンゴにすぐ気づいた右の人は、他人がリンゴを腐らせてしまう前に対処ができるでしょう。アドバイスをしてくれたり、なんならパパッとリンゴをむいてくれるかもしれません。しかし同じことを左の人がやろうとすれば、すぐに疲れてしまいます。
リンゴ食べたい。
自我ブロックには使命感を覚える!
繰り返すと、自我ブロックは、自信があって、人助けや社会貢献に使われるのでした。そうした特徴から、自我ブロックには使命感や責任感を感じます。
(自我ブロックという)自分のこうした側面については、人が既に知っているはずがないことであり、わかってもらうのは非常に難しいので、自我ブロックの機能は、称賛にはほとんど関心がありません。――説明するのは簡単なのですが。さらに、人がこれらの要素への誤解を示したときには、それを正すのは自分の権利であり義務であると感じます。
同上
先に言った通り、自我ブロックについては、自分がいちばんの専門家です。自我ブロックの大切さをいちばんわかっているのは、他人ではなく自分です。だからこそ、他人に褒めてもらうことが動機にはなりえません。そして、わかってもらえなかったり誤解されたりしたときには、わかってもらえるまで伝え続けようとします。それが自分の使命だ!というように。
この自我ブロックの中では、良心の呵責や疑念や羞恥心をを感じることはめったになく、このブロックが他者の責任になることもありません。
Model A – Wikisocion
繰り返しになりますが、自我ブロックには使命感や責任感を感じます。悪い意図で使うことはしませんし、間違っているのではないか?と不安に思うこともありません。「あの人がこう言ったから!」と人のせいにすることもありません。
自我ブロックはどんどん成長する!
ここまで読んで、自我ブロックってすごいな!と思う人がいるかもしれません。でも、「じゃあ自分の自我ブロックは絶対的に正しいんだ」「あの人の自我ブロックが言うんだから間違いない!」なんて、鵜呑みにするのはダメですよ。その人の自我ブロックがどれだけ正しいかは、その人の経験や知識や知性に左右されます。
注意:これはソシオニクスのタイプのもっとも強いブロックである一方、その判断の正確さは個人の経験や知識や知性のレベルに強く影響を受けるということは言わねばなりません。自我ブロックの機能が間違うことは大いにありえます。
同上
同じタイプで同じ自我ブロックを持つ人でも、実際には、すごい人とそうでない人の違いってありますよね。あるいは、5歳のころの自分と今の自分を比べてみてください。より正しい判断ができるのはどちらだと思いますか?やっぱり今のほうが間違うことは少なくなっているのではないでしょうか?
つまり、自我ブロックはどんどん成長するのです。経験を積んだりいろいろと勉強したりすることで、どんどん磨かれていくのです。
逆に、自分の自我ブロックを過信して経験や勉強を怠ったり、自我ブロックを使わせてもらえない環境にいて経験をちゃんと積めなかったりすれば、残念ながらぱっとしない人になってしまいます。
自我ブロックは、24、25歳に達すると完成すると信じられています。この観察はユングの「人生の前半は、健康な自我を形成するためにささげられ、後半は心の奥底へと進みそれを解放させるためにささげられる」という説明に一致するとするソシオニクス研究者もいます。
同上
特に若いうちは、自分の自我ブロック、つまり自分の使命がいまいちわからず悩んだり、十分に発揮できず苦しんだりすることがたくさんあるかもしれません。でも心配しなくて大丈夫です。「ずっとこうしていられたら楽なのになぁ~」と思えることをしたらいいんです。街にでかけるもよし、仕事するもよし、本を読むもよし、内省するもよし、家でぼーっとするもよし。自分が興味を持って没頭し続けられることが何か考えてみましょう!そしてそれを邪魔してくる人や環境は、ちょっと距離を置きましょう!