ソシオニクスのモデルAには8つの機能がありますが、強い機能と弱い機能とがあります。ウクライナのソシオニクス研究者A. Bukalovによれば、機能の強弱は4つのパラメーターで判断できます。当ブログでは、これを「4つの段階」として紹介してみます。
8つの機能の強弱には違いがある?
モデルAという考え方では、全てのソシオタイプが8つの機能を持っており、目的や状況に応じて使い分けているとします。そして機能には強弱があります。この強弱の違いは、それぞれの機能の「経験の蓄積の量と、情報を処理する能力」(Dimensionality of functions – Wikisocion)の違いのことです。なので、
と整理することができます。
さて、以下の図を見てください。

図では、色の濃淡の違いを、機能の強弱の違いとしてあらわしました。色が濃ければ濃いほど強い機能、つまり経験が多く情報をうまく処理できる機能です。
たとえば、主導する機能(第1機能)と証明する機能(第8機能)は、色がもっとも濃いですね。なのでこれらは強い機能、つまり、8つの機能の中でもっとも経験を積んでいて、どんなに複雑な情報でもうまく処理できる機能ということになります。
逆に、脆弱な機能(第4機能)と暗示された機能(第5機能)は、色がもっとも薄いのでもっとも弱い機能です。もっとも経験の蓄積がなく、単純な情報でないと処理できません。
各機能が具体的にどのような役割を担っているかはこちら:
4つの段階とは?
8つの機能には強弱があります。そしてそれぞれの機能の強弱は、冒頭でも説明した通り、A. Bukalovが提唱した4つのパラメーターから整理ができます。
- 個人の経験(Experience)
- 社会規範(Norms)
- 現在の状況(Situation)
- 時間経過(Time)
の4つです。※2020/12/28:訳語をあらためました。
以下では、これらをもとに、8つの機能の強弱を4つの段階にわけて説明します。
段階1:頼れるのは「個人の経験」だけ!
1つ目の段階です。この段階にある機能は、もっとも弱い機能になります。この段階の機能は、脆弱な機能(第4機能)と暗示された機能(第5機能)です。
この1段階目の機能は、先ほど挙げた4つのパラメーターのうち、「個人の経験」だけを頼りに情報を処理します。その他3つのパラメーターは、使えません。
パラメーター | 段階1 |
---|---|
個人の経験 | ○:経験したことならわかります! |
社会規範 | ×:一般的な基準…難しい! |
現在の状況 | ×:今の状況?こっちが聞きたい! |
時間経過 | ×:今後のことなんか知らない!泣 |
「個人の経験」から情報を処理するとは、「過去の自分はどうしていたか?」とか「A子ちゃんはどうやっていたか?」と、これまでの自分や他人の経験を辿って判断するということです。
たとえば、脆弱な機能にNiを持つESEなら、苦手な時間の見積りをするときは、個人の経験だけを頼りにするでしょう。

前回は1時間前に家を出たら、お土産も買えたし新幹線にも間に合った。今日も1時間前に家を出たら、お土産買えるよね?!
しかし個人の経験だけに基づいて判断をするため、ちょっとでも未経験のことがあると、何もわからなくなります。その結果、大失敗をして心がめちゃくちゃ傷つくかもしれません。

こんなレジ並んでるけど、間に合うの!?間に合わなかったらどうしよう!?
失敗を重ねるのは怖いですが、この段階は失敗によってでしか成長できないことも覚えておいてください。フォローしてくれる人がそばにいると安心できますが、失敗はバネにして、前を向くことが一番大事なことです。
段階2:「社会規範」はわかるけど…。
次に弱い2つ目の段階を見ていきましょう。規範の機能(第3機能)、動員する機能(第6機能)がこの段階の機能です。
この段階の機能は、「個人的な経験」と「社会規範」の2つのパラメーターを用いて、情報を処理することができます。
パラメーター | 段階2 |
---|---|
個人の経験 | ○:経験したことはわかります! |
社会規範 | ○:何をすべきかもわかってます! |
現在の状況 | ×:今の状況は…難しいです! |
時間経過 | ×:今後の予想!?わからん! |
この段階では、個人の経験のみならず「みんな」の経験に基づいて、「世間一般の基準(フツウ)」や「セオリー」を理解します。つまり「前の自分はどうだったか?」だけでなく「フツウはどうすべきか?」という2つの見方で判断ができます。
たとえば規範の機能にFiを持つLSIなら、人間関係の中で何をすべきか/すべきでないかを理解しています。

さすがに親しい人にしか言わないでしょ、フツウは。
しかしこの段階では、一般的なセオリーにのっとって判断をするので、特殊な状況や高い水準を求められる環境では苦労するでしょう。

この人は何をそんなに怒ってるんだ?しらんがな。
この段階の機能は、失敗を重ねずとも、本を読んだり人の助言を得たりしながら伸ばしていくことが可能です。自分の中の「セオリー」は、勉強によって少しずつきめが細かくなっていくでしょう。
段階3:「現在の状況」よく見ています!
ここからは「強い機能」の段階になります。創造する機能(第2機能)、無視された機能(第7機能)がこの3つ目の段階にあります。
この段階では、これまでの「個人の経験」と「社会規範」、そして「現在の状況」の3つのパラメーターによって情報を処理します。
パラメーター | 段階3 |
---|---|
個人の経験 | ○:経験したことはわかります! |
社会規範 | ○:何をすべきかわかります! |
現在の状況 | ○:今の状況、わかります! |
時間経過 | ×:今後の予想は、難しい! |
これまでの経験とセオリーも応用しながら、現在の状況について細かい部分まで確認していきます。そのため、状況にあわせて臨機応変に判断でき、複雑な問題でも解決することができます。
たとえば創造する機能にTeを持つILIなら、どんな状況でも細かく事実を捉えて、人にも合理的な指示を出せるでしょう。

君の状況を見た限り、A社は解約、B社で新規契約したほうがいいよ。
しかしこの段階は、状況を頼りに判断を下すので、まだ起きていない問題を未然に食い止めることはできません。何か起こる前にアドバイスを求められると、回答に困ってしまうかもしれません。

先に言ってほしかった!と言われても…。
この段階の機能を伸ばすには、実践あるのみです。勉強するのもいいですが、とにかく場数を踏んでいくことが大事です。
段階4:「時間経過」も織り込み済み!
最後の段階です。この段階の機能は、もっとも強い機能になります。主導する機能(第1機能)、証明する機能(第8機能)がこの段階にあります。
この段階では、個人の経験、社会規範、現在の状況に加えて、4つ目の「時間経過」のパラメーターを使用します。
パラメーター | 段階4 |
---|---|
個人の経験 | ○:経験したことはわかります! |
社会規範 | ○:何をすべきかわかります! |
現在の状況 | ○:今の状況わかります! |
時間経過 | ○:今後どうなるかわかります! |
この段階では、時間が経つにつれて状況がどう発展するかまで見通すことができます。この段階では、経験とセオリーと今の状況を頼りにしながら、まだ起こっていない結果まで予測します。
たとえば、主導する機能にNeを持つIEEは、今の可能性が今後どうなっていくかわかるので、成功の可能性を閉ざしてしまうことはないでしょう。

このプロジェクトもあのプロジェクトも成功で~す!
しかしこの段階の機能にも短所があります。あまりに膨大な経験とあまりに深遠な理解に基づいて情報を処理しているので、人に全てを伝えることができず、もどかしくなるかもしれません。

あれ、全然伝わってない…??
新しい価値によって歴史を進められるのは、まさにこの段階の機能です。自分が本当に良いと思うことを、素直にやっていけば大丈夫です。