ソシオニクス入門4回目です。ソシオニクスについて伝えることで、「MBTIの相性論」はない・MBTIとソシオニクスは別物であるということが広まってくれればと思っています。今回は、自我、超自我、イド、超イドについて少し踏み込んで考えます。
モデルAのおさらい
前回同様、今回もモデルAのおさらいをしましょう。今回はILIのモデルAを用意しました。
モデルAは、心の仕組みのことで、8つの機能があつまってできています。さらにその中には、8つの要素があてはめられています。
そして、モデルAの上半分は意識といいます。自分の外側の世界とかかわっています。下半分は、無意識です。自分の内側の世界とかかわっています。
つまり上の例のILIは、意識=NiとTe(自我)+SiとFe(超自我)によって、外側の世界とかかわり、無意識=NeとTi(イド)+FiとSe(超イド)によって、内側の世界とかかわっているタイプだということです。
自我、超自我、イド
今回は、自我、超自我、イド、超イドのそれぞれの関係について理解を深めていきましょう。
自我ego、超自我super-ego、イドidというのは、ソシオニクス独自の言葉ではなく、もともとフロイトの精神分析の言葉です。しかし、創始者Augustaがそれを参考にしながら名前をつけたようです。フロイトとは言葉の使い方が違うので注意が必要です。
まず、自我は、自分の外側の世界を認識するのが仕事です。しかし、超自我とイドの対立にたびたび邪魔をされます。それもそのはず、超自我とイドは、真反対のことを言うのです。超自我は、外側の世界に適応しようとしている一方、イドは逆に内側の世界を認識しようとしているからです。「もっと社会に合わせなさい!」「ありのままの自分になれ!」と言い合っているのです。
この超自我とイドを何かにたとえるなら、天使と悪魔になるでしょう。
サボっちゃいなよ。どうせ仕事行かなくたって誰かがやるよ。
職場のみんながどう思いますか?迷惑をかけてはいけません。
2人がうるさくて何も考えられない。
こんな感じ。
上の悪魔は「サボっちゃいなよ」とささやいています。サボる口実ならいくらでも思いついちゃうのが悪魔のいやなところです。悪魔のささやきはタイプによって少しずつ違うかもしれません。でも、悪魔の言うことだけに従って楽な道を通り続ければ、待ち受けるのは社会的な死という破滅だということは同じです。
天使は真反対に、社会に合わせることの大切さをくどくど説いてきます。内容はタイプによって違うかもしれませんが、ああしなさいこうしなさいととにかくうるさいです。天使は自分のことより社会のことが大事なんです。天使の言うことばかり聞いていても自分が疲れ果ててしまいます。ちなみに、現に超自我の命令を何もかも真に受けてしまっている状態を、精神分析ではうつ病と言うそうですよ。
超イド、私からあなたへ
超自我は「(自分を捨てて)社会に合わせなさい」と厳しいことしか言わないし、イドは「(社会に適合するのは諦めて)ありのままの自分でいいよ」と甘えたことしか言いません。社会適合をとるかありのままの自分をとるかの2択は、言い換えれば「うつ病or社会的な死」という2択のことです。
そんな2択なら悩むに決まっていますが、多くの人がこうした悩みを経験します。それは自分のために生きるという視点がもともと欠けていることが関係しています。社会に自分を合わせるのではなく、自分に自分を合わせて生きるのです。そうです、「内側の世界に適応すること」が仕事の超イドのことです。
超イドをキャラクターにたとえるならどうなるでしょう。突然深夜に起きてきて「どこ行くの?」と問いかける幼い子ども、盗み聞きを謝罪しつつ「それでいいの?」と詰め寄ってくる親友。あるいは主人公の外出を妨害する突然の雨――これも場合によっては超イド的と言えましょう。
職場の人がどれだけ迷惑すると思いますか?
そうは言っても行く必要ないんだからサボっていいよ。
サボっちゃうか…。
ちょっと待ちなよ!本当に仕事をサボりたいの?情けなくない?虚しくない?
あなたは…誰…?
超イドさ!君を助けに来たんだ!行こうよ、仕事!
う、うん………!!
つまり超イドとは、主人公が破滅の道を進もうとしているとき、突如背後から現れて主人公を我に返らせる他者のことです。*1超イドはいつも対立の外部からあらわれ、自分の本心に向き合うきっかけを与えてくれるのです。
ここでは、人間が他者へと向かう必然性が示唆されています。超イドは、イドと超自我の対立を解消するという重要な役割を担うにもかかわらず、無意識であり、自分だけではなかなか鍛えられないものだからです。それゆえ人間は、超イドの発達を助けてくれる他者を求めずにはいられないし、さらにはその探求こそが自己実現そのものだということになります。
私からあなたへ。このようにして、ソシオニクスは〈私〉個人の分析から、〈私〉と〈あなた〉という人間関係の分析へと滑らかに移行するのです。
おまけ
文中の会話は、再現できているかはわかりませんが、一応このILIのモデルAを意識しながら作成したものです。セリフは以下の骨組に肉付けする感じで組み立てました。
因果法則を捉えて(Ni)、利益を生むぞ!(Te)
平和を乱すな(Si)!雰囲気を壊すな(Fe)!
力を発揮してごらん(Se)!感情から考えてごらん(Fi)!
都合のいい可能性を探って(Ne)、正当化しちゃおう(Ti)!
次回は、お待ちかねのタイプ間の関係分析へと突入します。
2018/08/27追記:内容を大幅に変更しました。