宵のつれづれシリーズ、仕事帰りの電車の中で読めるくらいの軽い記事、というコンセプトではじめたシリーズです。今回は第82回、ESEの万能通貨です。
ESEの万能通貨
前回。ストラティエフスカヤによると、ESEの笑顔は前払いらしいよという話を書きました。
記事を書くために改めて読み返したのですが、気になった表現がもう1つありました。もう1回引用します。
笑顔、それはESE(ユゴー)の万能通貨であり、社会における成功と、彼が手にするあらゆる物質的利益の尽きることのない源泉である。
Конфликтные отношения: ЭСЭ – ИЛИ, 拙訳
笑顔は、ESEの万能通貨だそうです。
ここ、実際は結構意訳しておりまして、原文はуниверсальная конвертируемая валютаです。ユニバーサルでコンバート可能な通貨、直訳すると「普遍的で交換可能な通貨」です。
それで面白いなと思ったことに関わるんですが、私だったら「笑顔は、ESEの武器です」って説明しそうだなと思って。いやでも私じゃなくても「笑顔は、ESEの武器です」のほうが無難というか、すぐ思いつく表現に思えます。(※日本語的な言い回しなのかもしれませんが)
しかしストラティエフスカヤは、武器とは言わなかったわけです。
「通貨」と「武器」、この2つはどちらも、何か価値あるものを得るために使える道具という意味では共通しています。
しかし「武器」のほうは、何か価値あるものを一方的に勝ち取る・奪い取るといったニュアンスを感じられる言葉です。
一方で「通貨」はというと。何か価値あるものと等価交換するといったニュアンスを感じられる表現です。
さて前回も触れたように、笑顔というのは(ESEにとっては)それ自体に大きな価値があります。そして、ESEの笑顔は前払いなのでした。つまり、ESEはもうすでに価値を提供している。だから(ESEによれば)、ESEが一方的に損をする関係はあっても、ESEが一方的に得をするような関係は(ESEによればですが)成立しえないのです。
そういう意味でESEの笑顔は、一方的に奪い取る「武器」よりも、等価交換する「通貨」のほうが相応しい表現だと思いました。
さすが小説家・ストラティエフスカヤ。やっぱり言葉の選び方がちがうぜえ…!としみじみ思いました。

