仕事帰りの電車の中で読めるをコンセプトにした、宵のつれづれシリーズ第20回目。今日は、ILEの開けっぱなしの扉というタイトルでお送りします。
ILEの開けっぱなしの扉
前回はESIとLIEの双対関係を書きました。前々回まではESIとILEの衝突関係を書いてきました。ESIは双対・LIEも衝突・ILEもお風呂に入れようとしましたが、その反応はまるっきり真逆でした。
双対関係と衝突関係のやりとりは、比較してみるとだいぶ面白いです。うわべのやりとりだけを見れば、「良い関係は双対関係ではなく衝突関係のほうだ」と思ってしまうこともありそうなほどです。
で、今日は、#15で登場したILEくんとESI先輩のお話の続きでも書いてみましょう。
今回は新たに、ILEくんの同僚で双対関係のSEIさんが登場します。今回も実話をもとにしたフィクションですが、ESI先輩とのコントラストがなかなか鮮やかだと思います。
ではでは、スタート!
~~~~
とある会社の新人・ILEくん。最初に与えられた仕事は簡単な事務作業でしたが、ウッカリミスがなかなか減らず、今日もまた上司から指摘をされていました。
キミ、また資料が抜けているじゃないか! そしてこの資料とこの資料はクリアファイルに入れておいてほしいって、前もお願いしたんだけどなぁ…。
えぇ…!? おかしいな…。気を付けま~す…。
慌てて資料を印刷しなおし、クリアファイルをバタバタと探すILEくん。すると隣の、衝突関係・ESI先輩が声をかけます。
何探してる? クリアファイル? ああ、保管場所知らないか。SEIさんの後ろの棚の…あ、SEIさん席外してていないんだけど…左の上の扉開けるとそこの中に――
あーあそこか。見たらわかると思うんで大丈夫です。ども…。
ESI先輩はクリアファイルの保管場所を懇切丁寧に教えました。ILEくんは、ESI先輩が教えてくれた通りにクリアファイルを棚までとりに行き、印刷し直した資料を持って、上司のもとへかけつけました。
ILEくんが去ったあと、棚の扉は開けっぱなしになっていました。ESI先輩はそれに気づくと、扉をスッと閉めに行きました。
スッ
ILEくんはそんなことなどつゆ知らず。とりあえず上司に謝り、ため息をつきながら自分の席に戻ってきました。
ハハ、お疲れ。
ハァー…ついてないな…。
そしてしばらく経過したある日。ILEくんはいつものようにクリアファイルが必要になり、いつものように双対関係・SEIさんの席の後ろの棚へ取りに行きます。
クリアファイルもらいまーす。
どうぞ~。
SEIさんはILEくんには特に見向きもせず、自分のパソコンの画面に集中しています。ILEくんはその後ろで、いつものようにクリアファイルを必要な分だけ取り出し、そしていつものように棚の扉を開けっぱなしにして立ち去ろうとしました。
…が、今日はSEIさんに声をかけられました。SEIさんは、真顔で画面を見つめながらこう言います。
……最近、棚の扉を開けっぱなしにしていく赤ちゃんがいるみたいなんでちゅよね~。
赤ちゃん…? …アッ!
ILEくんが振り向くと、扉☆全☆開の棚がそこにあることに気づきました。SEIさんは、ILEくんに顔を向けて、わざとらしく目を細め、大げさな作り笑顔を浮かべてこう続けます。
何歳児でちゅか~? 開けたら閉めまちょうね~。お約束でちゅよ~♪(ニカッ
…ごめんなさ~い!! 2X歳で~す
2X歳児・ILEくんは、笑顔のSEIさんの後ろに「ゴゴゴゴゴゴゴ…」という手描き文字を見た――かどうかはわかりませんが、少なくともそのからかいを受けた以降は、棚の扉を閉めたかどうか確認するようになったのでした……。
fin.